第30回美濃和紙あかりアート展上位入賞作品

第30回美濃和紙あかりアート展

今年の上位入賞作品を写真とともに紹介します!

 

【一般部門】

 

〇美濃和紙あかりアート大賞〇

No.26 後鳥 勝則
作品名「光の入物」

審査講評

後鳥さんの大賞は最初の審査で満票を集め文句なしの受賞となった。多くの作品の中で、後鳥さんの「光の入物」が特別な目新しさがあったわけではない。ただその全体のおおらかな形体と内側からの光による和紙の特質の現れ方が絶妙である。

 

 

 

〇美濃和紙あかりアート賞〇

No.27 和田 俊一
作品名「ハナタバ」

 

審査講評

ハナタバというタイトルから花をモチーフにした作品なのだろうか。透かしのパターンの入った和紙を選んだことが、さらに複雑な光の陰影をもたらしている。台も金属の細い足で作っており、浮き上がって見えるところも美しさを探求している。

 

 

 

 

〇美濃和紙あかりアート賞〇

No.134 イソノ レイコウ
作品名「芽吹ク」

 

審査講評

自然に対する畏敬の念や命への祈りの心が和紙の灯りに込められており、力強く芽吹く小さな花の命が愛おしく感じられる作品。和紙の温かさに生命力が宿るような印象で、見る人に元気を与えてくれる作品である。

 

 

 

 

〇ライトアップ賞〇
(古川秀昭賞)

No.65 牧岡 那真 (拓殖大学)
作品名「不完全」

審査講評

「不完全」という「完全」を越える響きのあるタイトルもすばらしい。和紙の持つ特質、とりわけやわらかさと透明感を活かす造形感覚が作品の強さになっている。また明かりがついても消されても、それぞれにまるで台風のような凄みを内に秘められている。

 

 

 

 

〇ライトアップ賞〇
(堀木エリ子賞)

No.175 藤居 航(名古屋芸術大学)
作品名「朝霧

審査講評

美濃和紙の柔らかさ、強さ、透光性などの特性がシンプルに表現されている作品。積み重ねによる光のグラデーションや、揉み和紙の陰影、積み重ねた和紙の隙間から漏れる光の美しさが際立ち、素材本来の魅力が伝わった。

 

 

 

 

〇ライトアップ賞〇
(高橋理子賞)

No.140 大矢 伸治
作品名「紙の束

審査講評

紙糸ならではの張りのある質感が、緊張感を持ちながら、かつ自然でリラックスしたフォルムを作り出している。シート状の美濃和紙から作られる作品とは異なる新鮮な表情に魅力を感じた。

 

 

 

 

〇ライトアップ賞〇
(柴﨑幸次賞)

No.18 安田 武博
作品名「七重塔

審査講評

美濃和紙を筒状に丸めて軽くつぶし、連続的に配置し、七重の塔を描くように組み上げた作品。連続的な紙の重なりの陰影が美しい。構築物のような造形で、光源も適切でありバランス良く光っている。丹念に作られた作品である。

 

 

 

 

❁一般部門 総評❁

第30回も質の高い作品が多く、賞選考も張り合いがあった。コロナ禍であっても本来、作品制作は孤高の中でのこと、いい作品が仕上がるのは当然なことか。

大賞の後鳥さんの作品は特に目新しさはないのだが、おおらかな形の中に和紙ならではの造形と何より光の効果が美しい。アート賞には逆に新しい表現技法がみられ、入賞作品全て秀作ぞろいである。和紙にはまだまだ新しさが秘められていると教えられる。

 

 

 

 

【小中学生部門】

〇小中学生部門大賞〇

No.609 加藤 篤人
作品名「和紙の鷲」

審査講評

鷲の力強い造形と、和紙の持つ柔らかさが見事に融合した作品です。色付きの落水紙を貼り重ねることで、ふわふわした羽の雰囲気がよく出ており、淡い色の和紙を選んでいるので幻想的な光が広がって、空想の世界へ引き込まれていきそうです。羽根の形がV字でボリュームがあるため、光が端まで届きあかりとして素晴らしいです。

 

 

 

 

 

 

〇小中学生部門賞〇
(橋田裕司賞)

No.627 藤吉 菜瑳
作品名「やきいも」

審査講評

とにかく美味しそう。皮の感じもよくできていますが、中身のトロっとした表現は秀逸です。和紙でこんな表現ができるんですね。ザルの裏から少し光を入れると、やきいものシルエットがもう少し出るのでもっと良くなると思います。ごちそうさまでした。

 

 

 

 

〇小中学生部門〇
(松井勅尚賞)

No.653 中川 喜由
作品名「心の花」

審査講評

白い和紙に、ブルーの淡い光が美しい。青い和紙を間接的に使用したところが“あかりアート”だからこその表現であり、一輪をバランス良くまとめた素晴らしい作品である。

「作者は心にどんなことを思い描き、日々暮らしているのだろう。」青い薔薇の花言葉は「夢かなう」だそうだ。大変な時代だからこそ、応援の光の花として、人々の心に届くことを願います。

 

 

 

 

 

〇小中学生部門賞〇
(日比野光希子賞)

No.658 中濃特別支援学校 中学部 3年➁
作品名「ゆったり泳ぐウミガメ」

審査講評

海の中を気持ち良さげにゆうゆうと泳ぐウミガメの姿が心地良く届く、魅力的なあかりです。和紙が幾層にも重ねて貼られ、その和紙の重なりを通して届く光は、深く複雑な大海のキラメキとなって私たちを包んでくれます。

 

 

 

 

 

❁小中学生部門 総評❁

猛暑日が観測史上もっとも多い夏でした。そんな夏休みを、あかりアートのための制作に費やす皆さんの頑張りに敬意を表します。30回を重ねた「美濃和紙あかりアート展」です。改めて「美濃和紙」と触れ合いながら「あかり」として自由に表現する楽しさ、その“工夫”と“想い”を今回は特に中学生の作品に感じることができ、可能性を感じました。